リニア開業は必要なのか?

すでに開発済みの技術を早急に実用化すべきだ、人の移動の自由度を上げるべきだ、先行投資した実験線などのコストを早期に回収すべきだ、20世紀の論理からすると全てもっともらしく聞こえる。

だが、ちょっと待て。本当に必要なのか?サンクコストの誤謬に染まっているだけではないのだろうか。ゼロベースで考えるべきではないだろうか?

人の移動は必要なのか?

まず第一の視点である。

人の物理的な移動にこれまで通りの意味はあるのだろうか、そして、今後も意味を持ち続けるのだろうか?

言うまでもなく、「コロナ禍」によって世界は変わった。もう、以前の世界に戻ることはないだろう。リモートによる打ち合わせが一般化し、顔と顔を合わせる必然性はかなり低下した。今後も残るのは、「懇親」だとか「儀礼的なもの」のみが残るだけで、定常状態のオペレーションの範囲内では、もう、時間とお金を使ってまで「移動」する必然性は無くなった。

それは仕事における移動だけではなく、プライベートと仕事の間の移動、すなわち出勤とか単身赴任などの移動も不要となった。ホームオフィスで仕事を進めればいいからだ。オフィスに、支店、出張所、工場に常在する必要性は薄れたのだ。

リーモートだけではマネジメントができないと言う意見はある、が、今や国内だけでなく海外も含めてマネジメントしなくてはならない時代に、リモートのみでは不安というのはおかしくないか?

エンゲージメント、権限移譲という言葉があり、Autonomy(自律性)で各部署、工場などが、それぞれで十分な判断と行動が取れるような組織体が好ましいとされる世の中だ、そこに人が移動してマネジメントする意味というのはあるのだろうか?

なぜリニアか?

東京と名古屋を1時間で結ぶ必然性はあるのだろうか?

メリットはあるのだろうか?

3時間の移動が1時間の移動に短縮された、というのはとても凄いことのように感じるが、先に議論したようにそもそも移動なしで、目的が達成されればいいのだ。新たにコストをかける必要なはない。余計な苦労する必要などない。

また、報道を見る限りにおいて、リニアの路線維持コストに関する考察をあまり目にしない。移動総量(=移動効率 X 営業時間)を路線維持コストで割った時に、現在の鉄道と比較してメリットはあるのだろうか?

JR東海は、現存の東海道新幹線はすでに移動総量の増加が頭打ちになっているので、新たな価値(時間短縮)でより高い運賃を請求して、より利益率の高い輸送サービスをしたいのだろう。企業は、最低限として存続し続けること(Going Concern)が前提で、株主利益のために売上利益を年々増加させていかねばならない。将来の頭打ちが見えている以上、利益拡大のためにより高価格なサービスを提供しなくてはならない。それが、リニア開業なのだろう。

しかし、開業後のメンテナンス、地震、風水害などへの対応、補修について、現行の新幹線よりもメリットがあることを証明できるのだろうか?その証明を聞いたことがない。

今後、ますます移動そのものに価値がなくなる状況で、移動サービスにおいて「速さ」だけを訴求することで、消費者からの支持が得られるのだろうか?

移動における「楽しさ」を前面に出して価値を創造し、より高い収益を上げる方向への改善はできないのだろうか?例えば、新幹線は広軌なので在来線の狭軌よりも大きな車体だ。これを生かして、少し前に人気の高かった「豪華寝台列車」を走らせることはできないだろうか?鉄道における移動の楽しさ、体験を売る、という方向に進化するのが妥当ではないだろうか。

そもそも工事に勝算はあるのか?

揉めている静岡県北部の南アルプス(赤石山脈)を東西に貫通するトンネル工事には疑問だ。

静岡県が問題視している水の問題だけではない。

南アルプスは今なお隆起し続けている山脈だ。Fossa Magna(フォッサ・マグナ)を横切るトンネルになる。黒部ダムを建設する際に、破砕帯で非常な苦労をしたが(映画:黒部の太陽に詳しい)、地質的に非常に厄介なところを横断するトンネル掘削に勝算はあるのだろうか?失敗してからでは遅いと思うのだが。

また、掘るということは、土砂を外に持ち出さなくてはならないということで、これらの処分についても問題がある。不要な谷の部分に土砂を入れて埋めればいい、というものでもなかろう。完全なる環境破壊だ。

かといって、遠く海まで運んで埋め立てるのは非合理的だ。

今の時代において、このような大規模な土木工事の必然性はあるのだろうか?すでに別の手段(東海道新幹線)が存在しているというのに。

意味不明としか言いようがない。

これまで、苦労して開発してきたのだから、営業運転したい、というのはサンクコストに囚われているだけだ。第二次世界大戦の敗戦で、無くなった英霊に申し訳ないから戦争を続行します、とした態度となんら変わるところはない。

日本は今後も発展できるか?

そもそもリニア計画は、日本が高度成長を遂げ、さらに世界に冠たる経済立国としてもっと成長できると鼻息が荒い時に立てられた計画に過ぎない。

でも、今はそうではない。

コロナが蔓延する前、世界から観光客が来ていたのは、「日本は安い」から来ていただけだ。海外に出張なり旅行で出かけるとよくわかる。先進国で、安全で、衛生的なところで、食事、ホテルなど、旅行のコストが安く済ませることができるのは日本だけだ。1食を5ユーロ(600円程度)でいただくことが可能なのは、日本ぐらいだ。パリでは10ユーロは欲しいし、ドイツも、イギリスも大差ない。

日本の便利なビジネスホテルも、海外ではあまり多くない。安いホテルにはそれなりの理由がある。

日本の一人当たりのGDPランキングは低下する一方だし、成長率などまるでお話にならない。もう過去の国であり、「終わった国」なのだ。残念ながらそれが現実だ。

中国の上海のリニアですら中途半端に終わっているのに、沈みつつある日本でリニアは使い物になるのだろうか?鳴り物入りでつくってはみたが、全然採算が取れずに、走る(というより地上すれすれを飛ぶ)赤字路線、になるのではなかろうか。

2027年(当初JR東海が開業を予定していた年)の日本では、もう、リニアによる高速長距離移動の必然性は、無くなっているのではないだろうか?コロナが沈静化しても、一度変わった行動様式が過去に戻ることはないだろうから。

極めて個人的な見解で、根拠は希薄だが、今の年寄連中がごっそりいなくなり、日本が国際経済で春を謳歌していた記憶のない人が経済の中心になるまで、日本の発展はないだろう。2027年はまだ早くて、2035年ぐらいにまでならないと、一掃されないだろう。残念だけど、確信に近いものを感じる。

結論:リニアはもう要らない

所詮、日本の一時的な絶頂期の、そしてバブルの、技術絶対主義の時代の徒花が、「リニア計画」だ。もう、時代遅れだ。

そして、必然性がなくなった。

もう、ご破算にした方が良いのではないだろうか。

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